顕微鏡 第49巻▶第2号 2014
■解説

哺乳類オートファジー関連オルガネラの電子顕微鏡観察

和栗聡,植村武文,山本雅哉,矢橋あつ子

福島県立医科大学 医学部 解剖・組織学講座

要旨:オートファジーは細胞内リソソーム分解系の一端を担うとともに,生体の恒常性維持や細胞のストレス対応機構として重要視され,その研究進展が目覚ましい.オートファジーが発動されると新規膜構造物として隔離膜(あるいはファゴフォア)が出現し,細胞質の一部を取り囲む.これが閉じてオートファゴソームとなり,ここにリソソームが融合して内容物が分解される.極めて動的な膜変化と膜オルガネラ間融合を伴う現象であることから,その形態解析には電子顕微鏡観察が欠かせない.しかし,その際には若干の注意が必要である.特に隔離膜は2重膜構造を成すことが特徴的であり,その形態保持には固定法を含むサンプル処理法が大きく影響する.本稿では,まずオートファジー関連オルガネラについて,その形態学的観察ポイントを交えながら解説する.また,オートファジー研究の長年の挑戦課題である隔離膜の由来について,関連構造を含めた最近の話題を紹介する.

キーワード:オートファジー,隔離膜,ファゴフォア,電子顕微鏡観察,固定法

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