顕微鏡 第50巻▶第2号 2015
■講座

キイロショウジョウバエ第一次視覚中枢・視葉板の超微細構造

浜中良隆,泰山浩司

北海道大学理学研究院行動神経生物学講座
川崎医科大学自然科学教室(生物学)

要旨:昆虫の眼(複眼)で受容された視覚情報はまず,視細胞層(網膜)の真下に位置する第一次視覚中枢(視葉板)で処理される.視葉板はカートリッジと呼ばれる単位構造の繰り返しから成る幾何学的な構造体であり,カートリッジの数は複眼の単位構造(個眼)のそれと等しい.視覚情報はその後,2つのneuropil(視髄と視小葉複合体)を経て脳中枢へと送られる.視葉では数万を越えるニューロンが互いに神経連絡し,回路を形成している.そこでは,動き・色・形・明暗といった視覚情報が順次抽出される.本稿では,神経回路の理解が最も進んでいるキイロショウジョウバエの視葉板に着目し,その超微細構造について概説する.

キーワード:視細胞,視葉板,カートリッジ,tetradシナプス,capitate projection

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