顕微鏡 第51巻▶第1号 2016
■講座

走査電子顕微鏡(SEM)の電子光学

佐藤貢

(株)日立ハイテクノロジーズ

要旨:走査電子顕微鏡において分解能は重要な性能指標の一つである.本稿では,分解能と電子光学系の構成要素との関連性を理解するために,ビーム集束系の軌道理論を概説する.近軸軌道方程式から導かれる軌道の性質と分解能要因(電子源,レンズ収差,回折)の関係から,ビーム電流に対応した分解能の挙動(電子の回折が支配的な挙動,電子源サイズが支配的な挙動,電子源直下の集束レンズの収差が支配的な挙動)が示される.どのビーム電流においても,対物レンズの収差で決まるビームの最適集束角(最適開き角)が大きくなれば分解能は向上する.分解能と最適開き角を高精度に評価する手法として,光学像の情報量を評価する情報理論を適用した計算法を示す.

キーワード:走査電子顕微鏡,分解能,輝度,回折,収差

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