走査電子顕微鏡(SEM)の電子光学
(株)日立ハイテクノロジーズ
要旨:走査電子顕微鏡において分解能は重要な性能指標の一つである.本稿では,分解能と電子光学系の構成要素との関連性を理解するために,ビーム集束系の軌道理論を概説する.近軸軌道方程式から導かれる軌道の性質と分解能要因(電子源,レンズ収差,回折)の関係から,ビーム電流に対応した分解能の挙動(電子の回折が支配的な挙動,電子源サイズが支配的な挙動,電子源直下の集束レンズの収差が支配的な挙動)が示される.どのビーム電流においても,対物レンズの収差で決まるビームの最適集束角(最適開き角)が大きくなれば分解能は向上する.分解能と最適開き角を高精度に評価する手法として,光学像の情報量を評価する情報理論を適用した計算法を示す.
キーワード:走査電子顕微鏡,分解能,輝度,回折,収差