顕微鏡 第51巻▶第2号 2016
■特集:真空環境を離れ,原子に肉薄するSPM

電気化学界面の高分解能画像化と電位に応じた電気二重層の変化

福井賢一

大阪大学大学院基礎工学研究科物質創成専攻

要旨:電解質溶液と電極との界面に生じる電気二重層は,電極でのエネルギー変換・蓄積の場として働くが,これまで有効な局所解析手法がほとんどなかった.我々は,固液界面の固体側構造の原子分解能の画像化だけでなく『界面近傍の液体の局所情報』が得られる顕微鏡として近年急速に発展してきた周波数変調検出(FM-)AFMを電気化学系に適用可能とする電気化学(EC-)FM-AFMを開発してきたが,本稿ではそれを用いた電気二重層の解析例を,界面の分子動力学計算で得られた分子論的知見とともに紹介する.グラファイト電極の電位に応じて接近するイオンの水和エネルギーの違いにより,界面での水和ネットワーク構造が顕著な変調を受けること,さらに界面エネルギーの変化によって,界面吸着分子の集合状態や酸化還元反応活性にも影響を与えることが分かってきた.

キーワード:電気二重層,水和,界面エネルギー,電気化学デバイス

本文PDF