顕微鏡 第51巻▶第2号 2016
■解説

マイクロCT像とLight sheet蛍光顕微鏡像の融合による骨形成性毛細血管の3D可視化

宮彩子,黒田有希子,武田 佳彦,松尾 光一a,b

慶應義塾大学医学部共同利用研究室(中央機器管理部門)
慶應義塾大学医学部細胞組織学研究室
株式会社リガクX線研究所 ナノ形状計測グループ

要旨:高解像度で立体的に骨構造を捉える手段として,高分解能X線顕微鏡によるマイクロ・コンピュータ断層撮影(CT)法がある.一方,Light sheet顕微鏡はマルチアングル蛍光顕微鏡であり,X線マイクロCTと同様に標本をホールマウントで観察し,非破壊的に3次元画像を取得できる.さらにX線と蛍光の立体情報を融合させることにより,石灰化組織中の蛍光標識された分子の位置情報を視覚化できる.本研究では,「骨形成性毛細血管」と呼ばれる微小血管が豊富な耳小骨(ツチ骨)に着目し,マイクロCT画像で得られる管腔構造と,トマト由来レクチンを用いた蛍光標識で得られる血管構造を3次元的に比較した.3次元再構成原理の異なるふたつの手法で得られる画像の融合により,骨の軟部構造と石灰化構造を同時に3次元的に視覚化できることが示された.その具体的な手法と発展性について解説する.

キーワード:耳小骨,X線顕微鏡,マイクロCT,Light sheet,血管

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