顕微鏡 第51巻▶第3号 2016
■特集:植物形態研究の最前線

重複受精のライブイメージング

永原史織,東山哲也a,b,c

名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所(ITbM)
科学技術振興機構ERATO東山ライブホロニクスプロジェクト
名古屋大学大学院・理学研究科・生命理学専攻

要旨:被子植物の重複受精では,2つの精細胞が異なる2つの受精相手である卵細胞および中央細胞とそれぞれ融合し,次世代を担う胚およびその栄養組織となる胚乳を形成する.重複受精は,現在陸上において繁栄している被子植物が獲得した受精戦略として興味深いが,その詳細な機構は未だほとんど明らかになっていない.その理由として,重複受精が花器官の中の雌しべの奥深くで行われており,その過程を生きたまま直接観察することが困難であったことが挙げられる.近年,重複受精のライブイメージング技術の開発および様々な細胞操作技術との組み合わせにより,ダイナミックな重複受精の実態が徐々に明らかになりつつある.本稿では,ライブイメージング技術を基盤とした重複受精研究の現状と今後の展開について詳細に議論したい.

キーワード:重複受精,ライブイメージング,細胞操作,シロイヌナズナ

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