顕微鏡 第52巻▶第1号 2017
■特集:電子線による位相イメージングの現状

電子線ホログラフィーによる固体電解質内電位変化のin situ観察

平山司,相澤由花a,b,佐藤岳志a,b,Craig. A. J. Fisher,吉田竜視,山本和生,村田英一

一般財団法人ファインセラミックスセンター ナノ構造研究所
現在,株式会社日立ハイテクノロジーズ
名城大学理工学部

要旨:アモルファス固体電解質であるリン酸リチウムオキシナイトライドガラス(LiPON)薄膜を銅電極ではさんだ構造の実験サンプルを作製し,集束イオンビーム法とアルゴンイオンミリング法で透過電子顕微鏡(TEM)観察用試料に加工した.ホログラフィー電子顕微鏡内でこの試料に電圧を印加し,LiPON試料を透過した電子波の位相がどのように変化するかを計測した.次に,実験に用いた試料と同様の形状及びサイズの計算用モデルを想定し,そのなかに種々の電位分布モデルを仮定した.試料内に仮定した電位分布と試料から周辺空間に漏れ出た電場の両方を透過した電子波がどのような位相分布を示すかをシミュレートした.実験結果と最もよく合う位相分布を与えた電位分布モデルを固体電解質内の正しい電位分布変化であると決定した.この電位分布変化から,電圧印加時のイオン及びイオン空孔の動きを推測した.

キーワード:電子線ホログラフィー,漏れ電場の影響,3D境界電荷法,固体電解質,電位分布変化

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