顕微鏡 第53巻▶第1号 2018
■特集:生命を解き明かすクライオ電子顕微鏡法の新時代

創薬等ライフサイエンス用クライオ電子顕微鏡単粒子解析支援システム

宮崎直幸,廣瀬未果,常住規代,東浦彰史,中川敦史,岩崎憲治

大阪大学蛋白質研究所

要旨:クライオ電子顕微鏡単粒子解析は,近年急速に発展し,分解能が劇的に向上した.そして,その立体構造に基づいて,薬剤設計もできるようになりつつある.蛋白質研究所では,蛋白質研究の共同利用・共同研究拠点として創薬やライフサイエンスにおいて重要なタンパク質のクライオ電子顕微鏡単粒子解析の支援を迅速におこなえるシステムを構築してきた.我々のシステムでは,PfVという直径約30 nmの球状粒子の近原子分解能(3.3 Å)の構造を通常法(CTEM)とボルタ位相差法(VPC-TEM)のどちらでも,1週間以内に決定することができた.さらに,電子カウンティング機能を有するFalcon 3ECを用いた解析では,2.3 Å分解能の構造解析も達成できた.本稿では,この我々が構築してきたクライオ電顕単粒子解析システムの現状を紹介する.

キーワード:クライオ電子顕微鏡,単粒子解析,創薬,高分解能,ハイスループット