顕微鏡 第53巻▶第3号 2018
■特集:三次元:ソフトからハードへ(TEMの場合)

ソフトマテリアルの延伸トモグラフィホルダーの開発

陣内浩司

東北大学多元物質科学研究所

要旨:ソフトマテリアルの延伸下での3次元形態観察を可能とする電子顕微鏡用の延伸トモグラフィホルダーを開発した.この試料ホルダーの特徴は,ミクロトーム等で薄片化したソフトマテリアルを両側から均等に延伸する方式であり,延伸時の視野ズレを最小限に抑え,延伸状態で常に同じ視野を観察できることである.また,ホルダーの厚みを可能な限り薄くし,試料を延伸した状態で最大75度程度の傾斜角を可能としており,延伸状態での3次元構造解析が可能である.さらに,ソフトマテリアルの延伸実験に必要な大きな歪みを達成するため,ホルダーの(延伸の)作動距離を大きく取り,理論上,最大25程度の歪みを与えることができる.本稿では,シリカナノ粒子を含むイソプレンゴムを例に取り,その延伸下での構造変化について実空間観察した結果について報告する.

キーワード:透過型電子顕微鏡,引っ張りひずみ,その場観察,電子線トモグラフィ,ソフトマテリアル