顕微鏡 第53巻▶第3号 2018
■講座

TEM/STEM-EDSによる検出限界

福永啓一,近藤行人

日本電子株式会社

要旨:透過電子顕微鏡に備わるEDS検出器での極微量元素の検出限界についてAsをドープしたSiウエハの結果をもとに検討した.EDSでのAsの検出限界は,As-Kの場合で30 ppm(1.5 × 1018 atoms/cc),As-Lで70 ppm(3.5 × 1018 atoms/cc)であり,実用的な半導体素子に求められるドーパント濃度のレンジに到達している.スペクトルにK線とL線のように複数のピークが現れる場合,バックグラウンドの小さい特性X線を用いた方が検出限界は小さくなる.検出限界は,計測時間や照射電流量を多くすること,または低い加速電圧でスペクトルを収集することで下げることができる.TEMに挿入する前に試料をプラズマクリーナーやイオンクリーナーで処理することは,コンタミネーションによるバックグラウンド増加を抑制できるため有効である.

キーワード:透過型電子顕微鏡,エネルギー分散型X線分光,検出限界