歯根膜の感覚受容装置の形態学的基盤―特にルフィニ神経終末について―
新潟大学大学院・医歯学総合研究科・口腔解剖学分野
要旨:歯の支持・固定装置である歯根膜は豊富な知覚神経支配を受けており,咀嚼システムの感覚入力系として機能している.歯根膜の感覚受容器は侵害受容性の自由神経終末と機械受容器にわけられる.歯に加わる刺激は歯根膜機械受容器を介して,さまざまな口腔反射を惹起し,円滑に咀嚼運動を制御している.歯根膜機械受容器として低閾値遅順応性Ⅱ型の伸展受容器であるルフィニ神経終末が重要である.この神経終末は分枝を繰り返す太い軸索終末と終末シュワン細胞が付随するという特徴をもっている.軸索終末にはカルシウム結合タンパクなどさまざまなタンパクの発現がみられる.歯根膜ルフィニ神経終末の発育・成熟には歯の萌出力や咬合力のような機械刺激の付与が不可欠であり,また高い再生能力を有している.多種の神経栄養因子が時期依存的に作用することによって,歯根膜ルフィニ神経終末の発育・再生が制御されているようである.
キーワード:歯根膜,ルフィニ神経終末,微細形態,発生・再生,神経栄養因子