顕微鏡 第52巻▶第1号 2017
■特集:電子線による位相イメージングの現状

強度輸送方程式を用いた位相マッピング

大島義文,張暁賓

北陸先端科学技術大学院大学先端科学技術研究科

要旨:近年,収差補正装置の開発により透過型電子顕微鏡の空間分解能が飛躍的に向上し,軽元素検出を実現するまでに大きな成果を得ている.今後もさらなる空間分解能の向上が期待されるが,透過型電子顕微鏡には位相情報を得るという大きな課題もある.これまで,ホログラフィーが最も有力な手段として大きな成果を得てきたが,近年,それ以外の様々な方法も提案され,活発な議論が行われている.本稿では,強度輸送方程式による位相情報の抽出について紹介し,最近の研究成果を述べることでその特徴を明らかにする.この方程式は,たった3枚の透過型電子顕微鏡像から位相像を得ることができる点に優位性があり,より簡便な位相情報の抽出方法として期待できる.

キーワード:強度輸送方程式,位相マッピング,静電ポテンシャル,収差補正

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