生体解析分科会主催 on-lineミニシンポジウム(Live)のお知らせ

生体解析分科会では下記の通り on-lineミニシンポジウムを開催いたします。

テーマ    「バイオ向けクライオ透過電子顕微鏡の多様性の最前線2」
日 時       3月28日(月)14:00~
形 式       on-lineセミナー
対 象       クライオTEM、クライオFIB-SEM、クライオ光顕、また、急速凍結などの凍結装置を使っている人、
     これらの手法に興味がある人。
参加費    無料
参加申込はこちら

今年度、顕微鏡学会のシンポジウム(2011年11月)にて対面式(一部ハイブリッド)で開催され、大いに盛り上がった
シンポジウムでしたが、全国に散らばる学会員の先生方やクライオ電子顕微鏡に着手する先生方から、参加できなかった
から残念だったというご意見もいただき、急遽、内容と演者の先生方を少しアレンジして企画しました。
医学生物学から薬学分野まで、クライオ電子顕微鏡の活用は、多彩に広がっており、人体に繋がる大きな組織からの
視点、化学反応という極々小さい単位からの視点、多階層で積みあがり、様々な視点から、生命現象に迫ろうと、若手の
先生方が精力的に取り組まれています。
前半は、大きいスケールから、後半は、切っても切り離せない装置に視点を置きながらのご講演になります。
今回は、4名の先生方にご講演を依頼し、また、これらのクライオ電子顕微鏡を強力にサポートする装置メーカーから、
新しい手法や装置のご紹介をいただきながら、全国の学会員・クライオ電子顕微鏡の研究者の先生方、また、装置メーカーの
皆様との、活発な交流の場となれたらと思っています。
内容に、ご興味のある方は、ぜひ、奮ってご参加・意見交換よろしくお願いします。

【プログラム】
14:00~14:30(質疑応答含む)
1)クライオ電子顕微鏡を用いた In Situ 観察の生物学、医学への応用
  実際の実験するとき気をつけていること
    今崎 剛 神戸大学 医学部
クライオ電子顕微鏡トモグラフィー法は、細胞、組織、そして蛋白質のような生体試料の構造を、生理的条件に近い
状態で観察出来る非常に強力な手法の一つである。近年、検出器の高性能化や解析手法の向上により、電子線が透過
する薄い試料に関しては、微小管やアクチン、リボソーム等細胞内の分子の構造が識別出来る分解能で解析が
可能となってきた。
しかし実際にどのようにサンプル (細胞) を調整しデータ測定まで行うか、まだまだTIPSは乏しい。
本発表では、我々が現場でどのような事に気をつけながら実験を行っているか、いくつか実例を挙げながら紹介する。

14:30~15:00(質疑応答含む)
2) 蛍光ビーズを利用したCLEMによる同一試料観察 − cryo-CLEMでの活用をめざして
五味渕 由貴  九州工業大学大学院 情報工学研究院 物理情報工学研究系
光学顕微鏡や電子顕微鏡を用いた観察が行われているが、光学顕微鏡と電子顕微鏡では、視野の大きさや見え方が
異なり、同一試料、同一視野の観察が難しい。
光-電子相関顕微鏡法(CLEM: Correlative Light and Electron Microscopy)を利用することで、光学顕微鏡と
電子顕微鏡の両方で同一試料・視野の構造や現象の観察が実現している。
本研究では、使用するマーカーの種類、濃度、座標登録数によって、SerialEMや自作ソフトによる座標計算と、
ステージ移動後の視野の中心と目標物の距離(誤差)が小さくなる位置合わせプロトコルを検討している。
また、クライオ条件下で同様のプロトコルが適用できるか検証を行なっている。
当会では、それらの現状について紹介する。

15:30~15:45 休憩

15:45~16:15(質疑応答含む)
3) Cryo技術を用いたタンパク質のin situ構造解析
髙﨑寛子 大阪大学 蛋白質研究所
大阪大学・蛋白質研究所は、Cryo-LM、Cryo-FIB-SEM、Cryo-TEMの装置、全てが揃っている、日本国内でも
数少ない施設の1つである。これら装置が可能とするのが、細胞内で機能するタンパク質のin situ構造解析である。
これにより、精製したタンパク質を用いる単粒子解析法では実現できない、細胞内にのみ存在する超巨大タンパク質
複合体などの構造解析が期待される。
蛋白質研究所では、2020年度からCryo-LM、Cryo-FIB-SEM装置の立ち上げを行い、現在、本格稼働状態となっている。
これら装置を使用して取得したデータを例に挙げながら、蛋白質研究所でのin situ構造解析の現状を報告する。

16:15~17:45(質疑応答含む)
4) 放射光出身者による初めてのクライオ電顕導入
原田彩佳  筑波大学 生存ダイナミクス研究センター 構造ダイナミクス
クライオ電子顕微鏡による単粒子解析がタンパク質の原子モデルを得る方法として一般化したことにともない、現在、
国内において最新鋭の電子顕微鏡装置の導入が進められている。筑波大学生存ダイナミクス研究センターにおいても
CRYO ARMTM 200および CRYO ARM TM 300 IIをAMEDのBINDS事業の一環として2021年9月に導入した。
放射光施設としてのKEKとの連携はもちろんのこと、中性子回折測定の可能なJ-PARC、そして製薬企業の研究所の
集まるこの地にて化学を基盤とした創薬への貢献を目指している。今回は、これまで放射光X線を用いて結晶構造解析を
行なってきた私が、初めて電顕に触れ、同時に施設立ち上げ業務に携わってきた経験の一端を紹介する。

17:45~18:00(質疑応答含む)
5) 培養細胞の微小環境をデザインするAlvéole社PRIMOバイオエンジニアリング技術
水流功春 プライムテック株式会社
Alvéole社PRIMOシステムは倒立顕微鏡の対物レンズを通して、培養基板上に任意のパターンのUV光をマイクロメートル
単位で投影することができる光学システムである。生体分子のマイクロパターニング、UVセンシティブレジストの
フォトリソグラフィー、ハイドロゲルの精密な光重合など、さまざまな目的に使用することができる。特に透過型
電子顕微鏡法、クライオ電子線トモグラフィーによる細胞構造のイメージングを目的に、Cryo-EMグリッドメッシュ上へ
効率的に細胞を配置するためのマイクロパターニングも可能である。本講演ではPRIMOバイオエンジニアリング技術の
詳細とその応用事例について紹介する。

18:00~18:15(質疑応答含む)
6) クライオFIB技術の紹介
最新クライオTEMシステム及び、バイオ向けクライオFIB-SEMシステムのご紹介
松島英輝、水野議覚、山田晶子、三平智宏 日本電子株式会社
FIB-SEMは加工用のフォーカスイオンビーム(以下FIB)と観察用の電子ビームを備えた加工観察装置で、空間分解能の
高いFIBによりnm精度での精密な加工ができることが最大の特徴である。半導体業界を中心にTEM用試料作製で広く
用いられているFIB-SEMだが,最近ではクライオステージを取り付けることにより、凍結させた生物試料の加工、観察も
可能となってきた。しかし、冷却することにより発生するアイスコンタミネーション(試料表面に装置内の残留水分等が
アーティファクトとして付着する現象) は潜在的な問題であり、凍結試料の安定した加工観察にはこの問題への対策が
重要となる。本講演では、アイスコンタミネーション対策と酵母菌を用いたクライオ技法の応用例を紹介する。

18:15~18:45
7)質疑応答・意見交換