JSM日本顕微鏡学会

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技術認定試験
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電子顕微鏡技術認定試験問題

2002年度 電子顕微鏡技術認定試験問題 特殊技術 I (生物)

13題の問題のうち問1〜問7は必須問題,問8〜問13は選択問題である.問1〜問7はすべて解答し,問8〜問13はその中から4問を選んで解答しなさい.
【必須問題】
問1.グルタルアルデヒドについて,次の(   )の中に最も適する用語を語群より選び,記号で答えよ.(5点)
グルタルアルデヒドは電顕観察で使用される代表的な固定液であるが,( ア )に対しては固定作用がほとんどなく,それ以降の操作で多くが流出する.グルタルアルデヒドは2個の( イ )を持っており,不安定で,重合したり,グルタル酸を生じる.電顕試料作製のためには,( ウ )の高いものを使用することが必要で,現在では,( エ )のグルタルアルデヒドが市販されており,冷蔵庫または−20℃で保存する.通常3%前後の濃度で使用され,固定された細胞は薄い( オ )となる.
【語群】
a)純度  b)EM grade  c)アミノ基  d)アルデヒド基  e)黒色  f)黄褐色  g)カルボキシル基  h)pH  k)タンパク質  l)脂質
問2.超薄切片法の包埋剤として用いられる樹脂について,次の(   )の中に最も適する用語を語群より選び,記号で答えよ.(5点)
超薄切片法の包埋剤として用いられる樹脂は,1)モノマー(単量体)は透明で粘性が( ア ),( イ )が良いこと,2)重合反応が均一に進み,重合過程で( ウ )や膨潤が起こりにくいこと,3)( エ )の調節が容易であること,4)ポリマー(重合体)は適度な硬さがあって,薄い切片が切れること,5)切片を観察したとき,樹脂は無構造で電子線の( オ )が高いこと,6)電子線の照射によってポリマーの構造が変化したり変形しないこと,等の性質を備えていなければならない.
【語群】
a)散乱性  b)弾力性  c)収縮  d)pH  e)浸透性  f)高く  g)硬さ  h)透過性  k)接着性  l)低く
問3.アクリル系樹脂包埋試料から免疫電顕用に超薄切片を作る際,(1)予め支持膜を張った (2)ニッケルグリッドを用いることが多い.下線部(1)と(2)の理由を述べよ.(10点)
問4.ある組織を包埋前染色法(pre-embedding法)と包埋後染色法(post-embedding法)で分析するおもな手順を次の語句から選び,その番号をカッコ内に順番に並べよ. またDAB反応の原理と、DAB反応で検出する二次抗体の標識酵素名を述べよ. (10点)
【語群】
1.組織の固定
2.樹脂包埋
3.抗原抗体反応
4.コロイド金標識
5.四酸化オスミウム固定
6.固定組織の切片作製
7.超薄切片作製
8.DAB(ジアミノベンチジン)反応
9.エッチング
10.脱水
《解答欄》
包埋前染色法 ( 1 )→(   )→(   )→(   )→(   )→(   )→(   )→(   )
包埋後染色法 ( 1 )→(   )→(   )→(   )→(   )→(   )→(   )
問5.写真は動物組織のある分泌細胞の透過電顕像である.次の各設問に答えよ.(10点)
1)この写真でみられる細胞内の構造を4つあげ,その特徴を解説せよ.
2)この細胞は分泌細胞の一部であるが,この写真からそのように推定できる点を二つあげよ.

問6.採血したばかりの血液を1ml渡され,血球の走査電顕写真を撮影するように依頼された.血球の形態が良好に保たれた良質な画像を得るために考えられる試料作製法について,その手順を箇条書きで述べよ.(10点)
問7.ウイルスなどの微粒子の微細構造を透過電子顕微鏡で明らかにしたい.その方法と試料作製の手順を述べよ.(10点)

【選択問題】
<動物問題>
問8.ラットの肝組織を純形態学的に透過電子顕微鏡で観察するために,灌流固定をおこないたい.固定液,器具など必要なものはすべて用意されているとして,灌流固定の手順を説明せよ.(10点)
問9.細胞質における小胞輸送について,次の文章の空欄に最も適する用語を語群より選び,記号で答えよ.(10点)
近年の小胞輸送に関与する( 1 )の発見は,小胞輸送の観察が光学顕微鏡で可能になったことに端を発している.すなわち,イカの( 2 )内において,小胞が移動するのが,( 3 )像をビデオカメラで増強することによって明瞭に見ることができたのである.しかし,( 1 )自体の構造は( 4 )を用いての( 5 )法によって,初めて明らかにされた.一般にコントラストが良く,高解像度の( 5 )をおこなうには,( 6 )の大きな密度の高い金属を用いてできるだけ( 7 )く蒸着することが重要である.
 微小管を構成するチューブリンにはαとβがあり,この二つで( 8 )をつくり,これが一定方向に重合している.重合がさかんで伸長する側をプラス端,反対側をマイナス端とよぶ.( 1 )は,微小管上で小胞と結合し,ATPを分解して小胞をマイナス端→プラス端(核側→細胞膜側)に輸送する( 1 )が( 9 )であり,逆にプラス端→マイナス端(細胞膜側→核側)へ輸送するのが( 10 )である.このように,( 1 )の発見とその後の研究には,光学顕微鏡と電子顕微鏡のもつ機能が最大限に発揮された.
【語群】
a)レプリカ b)開口分泌 c)モノマー d)キネシン e)位相差顕微鏡 f)原子番号 g)ミオシン h)シャドウイング k)分子モーター(モータータンパク質) l)走査電顕 m)細胞質ダイニン n)ヘテロダイマー o)透過電顕 p)巨大軸索 q)アクチン r)微分干渉顕微鏡 s)厚 t)薄

<植物問題>
問10.下記の文章を読み,設問に答えよ.(10点)
花粉粒は吸水後しばらくして発芽し,花粉管を伸長し始める.微細構造的にみて花粉管は内外2層の細胞壁(通常,外層はセルロースとペクチン,内層はカロースが主成分)からなり,これらはゴルジ装置由来の小胞の開口分泌によって形成されることが明らかにされている.
次の表に示す花粉管形成についての1)〜5)の知見を明らかにするためには,どのような研究方法が必要か.それぞれについて語群より適切な語句を選び,例にならって簡潔に答えよ.
【語群】
透過電顕, 走査電顕, 蛍光顕微鏡, 超薄切片法, 免疫電顕法, メセナミン銀法, アニリンブルー染色, ペクチンの抗体(JIM 5),  ルテニウムレッド染色法(固定時に混合して使用), カロースの抗体, 包埋前染色法, 包埋後染色法
《解答欄》
  知     見 研 究 方 法
花粉管壁の二層性 超薄切片法による透過電顕観察
花粉管壁にカロースが存在する
(光顕レベル)
 
花粉管外層中にペクチンが存在する  
花粉管先端部にゴルジ小胞が集合し,開口分泌を行う  
花粉管の外層と小胞中にペクチンが存在する  
花粉管の内層と小胞中にカロースが存在する  
問11.模式図のような植物細胞の透過電顕観察のための超薄切片を得るには,固定・包埋に際してどのようなことに注意しなければならないか.前固定,後固定,その他考慮すべき点を簡単に述べよ.浸透圧は0.3モル濃度とする.(10点)


<微生物問題>
問12.真菌(カビの仲間)の細胞について次の各設問に答えよ.(10点)
1)細菌細胞と異なる点を述べよ.
2)細胞構造を超薄切片法で観察したい.試料作製の際の注意点と,具体的手順を述べよ.
問13.写真は細菌のシャドウイング法によって得られた電顕像である.次の各設問に答えよ.(10点)
1)蒸着方向を矢印 a〜e から選び,その理由を述べよ.
2)蒸着金属についての必要条件を述べ,金属を2つあげよ.
3)この細菌の鞭毛のタイプは何か.
4)鞭毛観察における蒸着アングルの留意点を述べよ.

一般生物特殊技術 I特殊技術 II

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