公益社団法人日本顕微鏡学会会長 陣内 浩司
この度、第81回日本顕微鏡学会総会(福岡市)において、本学会の会長を拝命させていただきました。就任にあたりましてご挨拶を申し上げます。
日本顕微鏡学会は長い歴史をもつ学会として、顕微鏡学の発展とその産業応用に大きな貢献をしてきました。これまで執行部の多大なご尽力により、現在、学会の財務状況は安定しており、質の高い講演会が運営され、若手育成のための様々な取り組みも施行されています。しかし、人口減少に伴って予想される会員の減少、環境問題などに伴う研究対象の多様化や複雑化などの社会の変化に対して、学会としても対応が必要となってきます。私は、研究発表会等の活動、調査・研究活動、学会誌の発行、研究業績の表彰等、など従来の方針は踏襲しながら、研究分野や研究内容の多様性を促進し発展させたいと考えています。会員の皆様のご協力の下に、特に以下の項目を重視しながら、学会の発展を目指していきたいと考えます。
(1) 学会間連携の推進と新分野への進出:研究分野の幅を拡げるためには、他学会との連携を積極的に進め、相互のコミュニケーションを密にすることが大事です。日本顕微鏡学会には金属・無機・物理・生物の会員が多く、これらの分野でのアクティビティが非常に高いことが特徴です。しかし、先端材料開発や生理現象解明に欠かせない化学分野の活動は拡充する余地があると考えます。そこで、今後、化学系学会との連携を推進するつもりです。これまでの材料や生物といった分野に加え、これらの境界を埋める化学分野を補強し、新しい材料(有機ソフト材料)分野への進出、化学分野の連携企業の獲得、などを行うことで学会の発展に貢献できると考えています。
(2) 顕微鏡手法の多様化:顕微鏡の分野でも「マルチスケール・マルチモーダル計測」および「計測・計算融合」は今後の潮流です。顕微鏡と相補的な計測技術を扱う諸学会とも適宜コミュニケーションをとり、顕微鏡法の多様化を促進することで、この世界的潮流を先導する学会として発展を進めます。
(3) 学会の国際化:世界の顕微鏡技術の発展を注視しておくことは大事です。会員(特に若手や女性)の海外学会への参加を奨励し、日本の国際コミュニティでの存在感の増加に務めます。また、諸外国、特にアジア圏、の顕微鏡学会との連携を図ります。
(4) 学会運営体制の強化:関西-九州-関東という異なる支部を経験したことから、地域の特色を活かした学会活動を奨励することが大事と考えます。また、円滑な学会運営を行うために事務局の強化を行います。
以上、今後の抱負について述べました。広範な顕微鏡学と顕微鏡技術を活用した科学を発展させ、学会をさらに発展させるために微力ながら努力いたします。皆様のご支援とご指導を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。