ハードウェア関連
質問1
各種電子銃の具体的な寿命を教えて下さい。
電子銃の寿命は次のような要因で決まり、具体的にはなかなか難しい問題です。
要因は、フィラメントの周囲の真空度、加熱温度、個々のフィラメントの先天的性格などです。真空度は高い程よく、加熱温度は低いほど良いようです。
フィラメントの先天的性格は事前には分からず、使用して寿命が来た時初めて分かるといった具合です。
目安としては、Wのばあいには、最近の装置では1、2年は使えるようです。LaB6は、2、3年は使えるようです。これは、フィラメントそのものが切れることはないのですが、LaB6先端が蒸発したりして先鋭さが無くなり、フィラメントパターンが崩れたりすることによって交換する必要に迫られることがあります。
また、LaB6単結晶とWワイヤーの熱膨張率が大きく異なるため、フィラメントの加熱、冷却の際に急激な温度変化を与えると、接合部がはがれて損傷を起こしますので注意が必要です。FEGは2、3年は使えるようです。
(日本電子、及川哲夫会員)
質問2
試料のドリフトを抑える方法はありますか?
試料のドリフトは主に次のような原因で発生します。それぞれの対策を書いておきます。
a).試料ステージ・ホルダーの熱的不安定性
装置の設置室内の温度変化により、ステージやホルダーが伸び縮みしますので、温度変化を抑えることが必要です。
b).電子レンズの熱的不安定性
電子レンズの焦点距離を大きく変えると励磁電流が変化して温度が不安定になります。安定するまで待つしかありません。また、レンズの冷却水の温度を安定させて下さい。
c).試料固定の不完全性
試料は、試料ホルダーにしっかりと固定して下さい。
d).試料の熱的不安定性
試料がビーム照射により熱的に不安定になることがあります。できるだけ、広い領域を均一に照射し、また不必要に強いビームを用いない注意も必要です。熱伝導性の良いカーボンや金属などの蒸着をした支持膜やマイクログリッドを使用することも効果があります。
e).試料損傷による試料の変形
不必要に強いビームをも用いない注意が必要です。熱伝導性の良いカーボンや金属を蒸着した支持膜やマイクログリッドを使用することも効果がありますし、場合によっては、試料表面にカーボンを薄く蒸着すると損傷が低減することがあります。この時の絞りのサイズには関係がありません。
f).試料のチャージアップ
不必要に強いビームを用いない注意が必要です。電気伝導性の良いカーボンや金属を蒸着した支持膜やマイクログリッドを使用することも効果がありますし、場合によっては、試料表面にカーボンを薄く蒸着するとチャージアップが低減することがあります。また、対物絞りを入れればチャージアップが低減することがあります。この時の絞りのサイズには関係ありません。
その他、思い当たる原因があればその対策を行って下さい。
(日本電子、及川哲夫会員)
質問3
FE電顕を用いた微少分析に適したの領域のオーダーを教えて下さい。
FE-TEMでの分析の微少領域のサイズは,普通ナノメータ・オーダーです。
学会発表や論文誌を見ていますと,0.2~0.5 nm程度の分析も行われているようです。
現在の市販のFE-TEMでは,0.2 nm程度の細いビームが使用できるようですが,現実の分析では,ビームの強さも考慮しなければなりません。
電子線のサイズを小さくすればする程,電子線強度も弱くなります。従って,実際の分析では,その分析に必要な分析領域(空間分解能),ビーム強度,分析時間,試料の状態などを考慮しながら,最適な条件をその都度試しながら決めているのが実情です。
(日本電子,及川哲夫会員)